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Symbolハンドブック

Symbolシンジケートについて知っておいて欲しいこと

Symbol²: スペースパイレーツの指針

シンボルビジョン

Ship cover

バージョン1.0

目次:

序章

まず始めに、錨をしっかりとおろすことが重要です。目的や使命は、船長や潮汐によって変わることはありますが、錨は私たちをしっかりと留めてくれるものです。混乱した時、満たされない時、不安な時、人はいつでも立ち返り、自分がなぜここにいるのかを再び思い起こすことができます。

私たちの錨は、これまでも、そしてこれからも、Symbolです。これまでのプロジェクトと同様に(そしてそれに続くこれからの多くのプロジェクトも)、私たちはブロックチェーンは新しい経済を推進するために最も適した技術であると信じ、そしてその追及への私たちの貢献がSymbolです。プロトコルとしては、富の溜め込みよりもチェーンのユーザーへ優先的に報酬を与えることを目的としたコンセンサスアルゴリズムが特徴です。システムとしては、決定論的な仮想マシン1のオペコードとは対照的に、システムレベルのプラグインを介し機能拡張を図る構造が特徴です。単純ではありますが、これら2つの特性は設計哲学、つまりユーザーファーストでサービス指向のアプローチを定義していることの表れです。ブロックチェーン技術の主役は人間であり、Symbolでやろうとしていること全てにおいてはこのことを強調する必要があります。

ここに記される文章は、ホワイトペーパーやライトペーパー、ビジネスドキュメント、マニフェストとなることを意図したものではありません。人間中心の技術は、ユーザーによって開発されるものであり、私たちはコミュニティとともにSymbolを定義し、デザインし、開発を行っていくつもりです。代わりとして、これを船の進路の指針として使える北極星と考えてください。錨は私たちを、しっかりと地に足をつけさせるでしょう。そして北極星は、新しい地へ向かう船を導く星座です。

~Gimre

~Hatchet

~Jaguar

SymbolとNIS1の未来

成功するプロトコルの核心は、ディスラプション「破壊」です。決済インフラのディスラプション「破壊」 (Bitcoin)、クラウドコンピューティングのディスラプション「破壊」 (Ethereum)、クラウドストレージのディスラプション「破壊」(Arweave)、そしてワイヤレスネットワークのディスラプション「破壊」(Helium)。その点においてSymbolは、ユーザーが価値をデジタルトークンとして定義し、交換することができる効率的なマーケットを提供することで、既存および新興経済圏共々ディスラプション「破壊」することを目指しています。

これらの市場は、目的に応じて構築された小さなチェーン(サブチェーン)で表されて、部分的にゼロ知識証明に基づいたロールアップ中心の相互接続によって決済レイヤー(メインチェーン)にアンカリングされます。各サブチェーンは、新しいブロックを紡ぎ出したノード(ブロックハーベスター)に報酬を与える独自のユーティリティトークン(モザイク)で表されます。これらのユーティリティートークンは、ステーク(ノードに流動性提供者としての機能を担わせる)、または(分散型アプリケーションや分散型取引所を通じて)モノやサービスと交換することができます。

流動性提供は、ノードが行える新しいタイプのサービスであり、あるモザイクから別のモザイク(トークンペア)への交換を受け入れます。ノードが流動性提供を担うことを選択した場合、XYMのほか少なくともひとつの他のサブチェーンのトークンをステークすることが求められます。効率的な流動性提供ノードは、多様なトークンペアバスケットを保ちます。そうすることで、ノードは追加料金を徴収するスワップリクエスト(新タイプトランザクション)をすることができます。

決済レイヤーでトランザクションをファイナライズさせるためには、メインチェーンのユーティリティートークン(XYM)が必要です。特定のサブチェーンのすべてのノードは、ロールアッププロセスに参加するためにXYMをステークする必要があります(したがって、ブロック報酬の分配を共有します)。ノードは特定の取引(有効性証明やステーブルコインなど)に特化することもできます。また、シンジケート(ネットワークの需要に応じてサブチェーンに割り当てられる、組織化されたノード群)に委任することもできます。

Symbolに登場する最初のサブチェーンとして計画されているのが、NIS1とそのネイティブトークンであるXEMです。NIS1には新たにロイヤリティタックスという新たな概念が導入されます。ロイヤリティとは、レヴィ機能を応用したもので、あるトークンの販売額の一定割合をアカウントに振り分けることができ、タックスは、送金に加えて追加料金を支払うものです。どちらの取引もXEM建てで、流動性提供ノードでXYM(または他のサブチェーンのトークン)と交換することができます。

クリエイターエコノミーの台頭により、ブロックチェーン技術は、単純な暗号化された識別子だけではなく、複雑な価値の取引にも利用されるようになってきました。特にNFTやデジタルコレクティブルは、多くのアーティストにファンへの直接還元モデルを提供しています。しかし、コンテンツがオンチェーンに保存されることはほとんどないため、データの永続性は多くのチェーンで問題となっています。イーサリアムで最も一般的に利用されている標準規格の「ERC-721」では、発行者が参照するデータ(オーディオ、画像、動画ファイルなど)をどこに保存するかについて制限を設けていません。permaweb2や分散型ストレージサービス3の出現は、データ永続性の問題に対する適切な解決策を提供してきましたが、トークン自体から分離すると所有権の保証が弱くなり、複数のトークンが同じデータを要求したり、保存されたデータが許容範囲を超えて変更されたりするリスクが生じます。

このジレンマを解決するひとつの方法として、コンテンツを保存するための専用サブチェーン群が考えられます。ここでは、モザイクは特定のデータファイルを表します。購入希望者やdAppsは、販売時にコンテンツの真正性と来歴を証明する有効性証明の生成をすることができます。購入時には、有効性証明とトークンにより、実際のデータ自体の復号化ができます。より軽量なソリューションとしては、分散型ストレージプロバイダへのブリッジとなる専用のサブチェーンです。ノードは専用のストレージプロバイダとして機能し、そのサービスの対価として報酬を得ることができます。データの永続性は、複数のサービスに依存するのではなく、発行チェーン自体と結びついています。

Symbolの初期におけるハイブリッド設計では、アトミックスワップを介しパブリックチェーンとプライベートチェーンの相互に作用していましたが、サブチェーンの導入により、データの永続性とコンテンツ固有のネットワークの問題を、より洗練されたソリューションによる解決が可能になります。 パブリックブロックチェーンの潜在的可能性は、すべてのユーザーがルートユーザーとなる共有グローバル状態ですが4、物理的にも技術的にも実現には限界があり、単一のパブリックチェーンでこれを達成することは困難です。 マーケットの需要と、それを調整する設計に基づいて、コンテンツを運用するように運営主に権限を与えることにより、ネットワークのスループットは、システムのひとつの部分に依存するのではなく、付加的になります。

Symbolの未来は、グローバルでスケーラビリティによって制約されない、カスタムメイドチェーン領域の中心となるハブとインターチェンジ・レイヤーを想定しています。サブチェーンは、それに向けた最初の一歩です。

シンジケートとシステム設計について

ビジネス理論によると、ディスラプション(破壊)とは、新しい市場や価値のネットワークを創造し、最終的には既存の市場をリードする企業、製品、業種間の連携に取って代わるイノベーションと定義されています5。このようなイノベーションは、大きなチームや既存の企業ではなく、自己組織化された個人による小さなチームによって生み出される傾向があるとされています6。ディスラプション(破壊)のプロセスは、従来のアプローチよりも時間がかかり、失敗のリスクも高くなります。ですが、成功すれば、いったん導入された技術は、他の技術よりも早く普及し、大きな影響を与える傾向があります。

中央集権的な構造は、分散型システムの開発とは相入れないということはよく知られています。ビットコインの成したことは、中央集権的な権威組織の失敗に直接対応したものであり、それ以来、権力の分散は現在までのすべてのブロックチェーンネットワークの設計目標であり続けています。

いずれにしても集中化は、専門化 の副産物として、あるいは規模の経済として、一定期間は自然に起こります7。これは、プルーフ・オブ・ワーク(マイニングプールの寡占、ハッシュレートの集中、特殊なハードウェアによって)とプルーフ・オブ・ステーク(富の集中、バリデーターインフラの集中によって)の両方で証明されています。このように、ブロックチェーンが復調して良い方向に向かうかどうかは、エコシステム内の当事者が協力する方向にインセンティブを得られるかどうかによって大きく左右されます。これはゲーム理論の基本であり、システム設計を成功させるためには、この点を押さえることが鍵となります。

Symbolでは、「シンジケート」というコンセプトでコラボレーションを実現しています。伝統的にシンジケートとは、共通のミッションを達成するために協力する個人、企業、または企業の自己組織化されたグループのことです。シンジケートは暗号通貨の新しい概念ではありません。イーサリアム財団やテゾス財団などの非営利団体は、非公式にシンジケートとして分類されますし、分散型自律組織(DAO)や非公式のワーキンググループ、または研究グループも同様にシンジケートに分類されます。DeFiのMEV(miner-extractable value)に焦点を当てた研究開発組織であるFlashbots8は、海賊組合の考えをベースにした非公式のシンジケートであるPirate hacker collectiveを倣っています。シンジケートは、暗号通貨の外部でも見られます。数十億ドル規模のエンターテインメント、ハードウェア企業であるValveは、中間管理職や正式なリーダーシップを持たない非階層的なデザイン(Flatland)に倣っています9

今日では、インフラシンジケート(ノードとその運営主)、プロトコルシンジケート(開発者とシステムアーキテクト)、ユーザーシンジケート(dAppsと個人ユーザー)の3つの自然に形成されたシンジケートを見ることができます。シンジケートは、個人の欲望よりも、チェーンの総合的な成功を優先させるというインセンティブを持っています。

その中心となるのが、シンジケートの代弁者であるアンバサダーです。アンバサダーは、そのコミュニケーション能力と人間関係におけるスキルによって選ばれます。アンバサダーは、混沌とした状況を調整し、代表的なコミュニティのアイデアをサポートします。アンバサダーは、翻訳者、ライター、教育者でもあり、あるプロトコルにおいては「エコシステムの代表」と、また別のプロトコルでは「ネットワーク・コーディネーター」と呼ばれています。Symbolでは、アンバサダーは選挙で選ばれ、委任ハーベスティングによって資金を調達することができます。もしコミュニティが、選ばれたアンバサダーが能力を発揮していないと感じたら、新しいアンバサダーに委任することができます。

委任ハーベスティングと並行して、システム全体に適用できる別の概念としては、Quadratic Fundingがあります。Buterin、Hitzing、WeylによってLiberal Radicalismで初めて提案された10Quadratic Fundingは、quadratic voting(重み付け投票)の概念を、公共財の資金調達に適用しようとする試みです。経済学では、公共財とは、非排除性かつ非競合性の財と定義されています。非排除性とは、個人の使用を排除できないことを意味し、非競合性とは、個人が使用しても他の人の使用可能性を低下させないことを意味してます。公共財の例としては、オープンソースのソフトウェア(ブロックチェーンプロトコル、インターネット、オペレーティングシステムなど)、無料の教育プログラム(ニュースレター、ポッドキャスト、技術文書など)、無料のサービス(公共のテレビやラジオなど)などです。

Symbolでは、Quadratic Fundingによって、プロジェクトの資金調達における重要な課題を解決することができます。それは、どのプロジェクトが最も多くの個人に恩恵をもたらすかを、どうやって判断するかということです。Symbolは、個人が次にどのプロジェクトに資金を提供すべきについて、「投票のために買う」ことを可能にし、公共財の資金調達に特化したマッチングシンジケートで寄付を重み付けさせることでこれを実現しています。投票権を追加するとリターンが減少するために、ベンチャーキャピタルや大口のクジラ、中央にいる権力者から、権力を分散させることができます。要約すると、個人の寄付の数の方が、個人による資金提供の総額よりも重要だということです。

シンジケートは強力な自己組織化の形態であり、ブロックチェーンを成功させた原則と同じ原則(破壊、分散、透明性)へのコミットメントを強化しながら、参加者が自分自身の成功よりも集団の成功を優先するようにインセンティブを付けることで、うまく働くと考えています。シンジケートは、重み付け投票的なQuadratic Fundingと組み合わせることで、共通のミッションに沿った貢献者や協力者からなる、活気に満ちた自己組織化されたコミュニティを強化すると、それがSymbolだと考えています。

スペースパイレーツコード

一見無法地帯のようなシステムであっても、海賊達には共通の合意がありました。泥棒の間には名誉がありました。海賊達は無法者でありながらも、自分たちの間での争いを減らし、利益を最大化する方法を見つけ出しました。彼らは民主的な選挙を用い、航海前に憲章を作成して、略奪、労働、責任などを分担し、仕事における規則を定めました。また、禁止行為とその罰則、船とクルーの安全のためのルール、生産性の高いメンバーへの報奨金やボーナスなども定められていました。

出航前に、海賊たちはキャプテン及び需給品管理役の選出と同時に条文を書きました。キャプテンは上司ではなく、クルーの意向に沿って任務を遂行し、多数決や反乱があればいつでも交代させることができました。キャプテンは概して、誰が何を略奪するのか、当局からの逃亡方法や、攻撃への対処方法をクルーに指導する、大胆で断固としたリーダーであることが期待されていました。需給品管理役は、クルーの利益のため、秩序を保ち、クルー間の争いを解決し、各クルーに分配される食べ物や飲み物の量を決定しました。すべてのクルーは、これらの条項に同意し、リーダーを選出しました。契約内容や他のクルーに不満がある場合は、自分の意思で自由に離れることができました。

海賊は、彼らの利害関係について取り決めを執行したりする政府を持たないにもかかわらず、合法的な世界の人々と同じように調和を保つことができました。これは、集めた戦利品から富の分配まで、すべてのことに透明性があったこと、自分たちの利益よりも船の総合的な成功を優先したクルーのおかげであること、そして海賊船の成功は、平等と仲間意識へのコミットメントの積み重ねのおかげであることを示しています。Symbolに特化したシンジケートは、このような海賊文化からの影響を大まかに受けつつも、非階層的な企業構造によって定義されたフレームワークに従うべきだと考えています。

ここに、Symbolが次の航海に出る前に行う誓いである、我々の指針たるべくクルーとキャプテンとの間の合意事項を提案します。どのような条文であっても、コンセンサスが必要であり、重要なのはクルー(コミュニティメンバー)の承認でありますが、一般的なガイドラインを設定することは有用であると考えています。

全てにおいて、Symbolのため、何よりも。


  1. Griffin Ichiba Hotchkiss, Andrei Maiboroda, and Paul Wackerow, “ETHEREUM VIRTUAL MACHINE (EVM),”docs, ethereum-org-website/src/content/developers/docs/evm/index.md, accessed June 7, 2021,https://ethereum.org/en/developers/docs/evm/ 

  2. Store Data, Permanently.,”Home page, arweave.org, 2020,https://www.arweave.org/ 

  3. David Vorick et al., “Decentralized Internet for a Free Future,”Home page, Skynet, 2021,https://siasky.net/ 

  4. Balaji S. Srinivasan, “Yes, You May Need a Blockchain,”Blog post, Balaji S. Srinivasan, May 14, 2019,https://balajis.com/yes-you-may-need-a-blockchain/ 

  5. Clayton M. Christensen, Michael E. Raynor, and Rory McDonald, “What Is Disruptive Innovation?,”Harvard Business Review, December 2015,https://hbr.org/2015/12/what-is-disruptive-innovation 

  6. Lingfei Wu, Wang Dashun, and James A. Evans, “Large Teams Develop and Small Teams Disrupt Science and Technology,”Nature 566 (2019): 378–2,https://par.nsf.gov/servlets/purl/10109889 

  7. Aaron Shaw and Benjamin Mako Hill, “Laboratories of Oligarchy? How the Iron Law Extends to Peer Production,”Arxiv, 2014,https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1407/1407.0323.pdf 

  8. Flashbots,”software repository, github.com/flashbots, 2021,https://github.com/flashbots/pm 

  9. Phanish Puranam and Dorthe Døjbak Håkonsson, “Valve’s Way,”Journal of Organization Design 4, no. 2 (June 2015): 2–,https://www.researchgate.net/publication/282395703_Valve%27s_Way 

  10. Vitalik Buterin, Zoë Hitzig, and E. Glen Weyl, “Liberal Radicalism: A Flexible Design for Philanthropic Matching Funds,”Available at SSRN 3243656, 2018,https://www.gwern.net/docs/economics/2018-buterin.pdf